旧町立図書館の建物が解体の危機に

2015年1月10日 旧鎌倉図書館

図書館とともだち会報169号掲載

とび込んできた驚きの情報

TOTOMO15周年記念誌の発行を無事にやり終えてほっとしたのも束の間、昨年(2014)11月下旬、とんでもない情報が入ってきました。

御成小学校に隣接する旧町立図書館の建物(昨年6月まで教育センターとして使われていました)を取り壊し、その跡に2階建てのプレハブ庁舎を建てる、そのために土地・建物を教育委員会所管から首長部局に移管し、12月議会に解体のための予算を含んだ補正予算を提出するというのです。

私たちがこのことを知ったのが11月21日(金)で、すぐさま市役所に申し入れ、翌週の25日(火)に担当の行革推進課に話を聞くことができました。

そこでの説明は、旧図書館の建物と901会議室(組合事務所が入っているプレハブ)を解体し、その跡地に2階建てのプレハブ庁舎を建て、1階に現在第4庁舎にある「おなり子どもの家」を移し、2階には狭隘化した本庁舎の執務室の一部を移動させる、建物の図面はあるが議会前なので見せられない、旧図書館の建物は木造で老朽化しており保存する考えはない、解体・建築工事の過程での遺跡発掘の可能性については文化財課に問い合せ中、というものでした。

旧図書館は老朽化して危険なのでプレハブに建替え、市庁舎の狭隘化と法改正で面積が不足する子どもの家の問題を一挙に解決しようという計画で、旧図書館については単に「老朽化して危険な木造の建物」としか考えていないことがわかりました。

旧町立図書館と間島弟彦氏

旧町立図書館は昭和11年に間島弟彦氏の寄付によって建てられた和洋折衷の近代建築で、登録有形文化財の指定が望まれる御成小学校旧講堂と共に歴史的価値の高い建物です。間島弟彦氏は、鎌倉国宝館の建設募金にも多額の寄付を行い、第一小学校、第二小学校、鎌倉高等女学校への資金援助、関東大震災で倒壊した英勝寺山門の再建保存にも尽力し鎌倉の文化・教育の発展に大きく貢献した人物です。

旧図書館の入り口付近には間島氏の功績を顕彰する記念碑がたてられています。

12月4日にはTOTOMOとして旧図書館の見学会を実施しましたが、瓦屋根に縦長の窓という和洋折衷の外観だけでなく、内部の意匠もムク板の床や窓の造り、温かみを感じさせる階段の手すりなど当時の近代建築の趣がいっぱいで、書庫にはホゾ組みの木製書架がそのまま残っていました。

もちろん耐震補強や傷んだ部分の補修は必要でしょうが、老朽化して危険というほどの印象は受けませんでした。

現に教育センターが移転した後もここは今年3月までは使用されることになっています。

ロビー活動と要望書の提出

行革推進課との話し合いの翌日(11/26)から 12月の初めにかけて、補正予算を審議する総務常任委員会や関連性の高い教育こどもみらい常任委員会に所属する議員のみなさんに面談をお願いし、関係資料をお見せしながら以下に述べる 4点を中心に説明をさせていただきました。

①何の前触れもなく、いきなり補正予算に含める形でことを進める手法に疑問を覚える、もっと広く市民や専門家に意見を聞くべき案件ではないか、②旧図書館が持つ歴史的文化的価値について間島氏の功績も含め評価し、その保存・活用の可能性を探るべきではないか、③今小路西遺跡の範囲内にあり、遺跡発掘の可能性についても視野に入れて慎重に進めるべきではないか、④子どもの家については御成だけでなく全市的な課題であり、御成についても場所の確保が旧図書館解体に直結する必然性はないのではないか。

私たちが面会したほとんどの議員はこの件に関して市から詳しい事前説明を受けておらず、常任委員会の中でも議員からの資料請求で審議が度々中断されるという状況でした。各議員によって意見は異なるものの、わたしたちの説明に共感する意見や参考になる助言を多くいただきました。
また、説明の主旨で述べた4点を中心に市長あてと市議会議長あてに要望書を作成し12月1日に提出しました。

議会での審議状況と市長からの回答書

12月12日に開かれた教育こどもみらい常任委員会では竹田議員の発議により旧図書館の土地・建物を普通財産に移管し取り壊すことになった件が議事日程に追加されました。

竹田議員の「旧図書館の建物を修理・保存するのではなく解体するという判断はどのようになされたのか。

また、判断が決まった段階で市民への説明が必要だったのではないか」という質問に対して、事務局の回答は「市庁舎のスペース確保のために全庁的な検討会議を持ち、その中で決まった。そこでは保存するという意見は出なかった。今後は大きな財産の変更がある場合は市民への説明を考慮したい」というものでした。

高橋議員からも「ランドマーク的性格を有した建物であり、取り壊すにしてもきちんとした説明がされるべきではないか」、三宅議員からも「歴史的建造物としての評価についてはどう考えているのか」という質問が出ました。これに対して事務局は「老朽化して危険なので安全性を優先して実務的に処理した」と答えるのみでした。

補正予算を審議する総務常任委員会では12月18日と22日にこの問題がとりあげられ、18日には中沢議員が「御成小の教室が足りない、不登校施設のためのスペースもないと言いながら、他方で御成小に隣接する教育財産を自ら放棄するというのは矛盾している」と追及し、22日も旧図書館の解体はいつどこで決まったのかという中沢議員の質問に対して「平成23年に原局(教育委員会)が決めた」(経営企画課長)、「庁内検討会議で決まった」(教育総務課長)と答弁が事務局の中で食い違うなど、耐震診断もせずご都合主義で解体を決めたことが明らかとなりました。

他の議員からも、議会や市民に説明せず乱暴なやり方だなどの意見が出ましたが、補正予算の中にセットされているため、この案件だけ否決することはできず、補正予算は採決となりました(千議員はこの案件ともう一つの議案に反対を表明し採決時に退席)。

続いて、12月26日に市長からの回答書を原田教育部次長兼教育総務課長から受け取りました。内容は要望への回答というより経過説明で、議会答弁の範囲を超えるものではありませんでした。
回答内容をめぐってやりとりをしましたが、何を話しても「庁内検討会議で決まったこと」という説明に行きつくという実り少ない話し合いとなりました。

シンポジウム開催と文集の発行

12月24日の本会議で補正予算は成立しましたが、この議案への討論を行った3人の議員(三宅、赤松、岡田各議員)は3人とも旧図書館解体について強い疑念と抗議の意思を表明されました。ロビー活動の成果です。また、全メディアにプレスリリースした結果、1月6日付の神奈川新聞の社会面にこの問題が大きく取り上げられました。

経過は以上に述べた通りですが、今後の取り組みとして次のような企画を考えています。一つは2月1日午前に予定している総会と同じ日の午後、同じ場所(NPO鎌倉)で緊急シンポジウム「旧図書館の保存・活用を求めて」を開催します。もう一つは文集の発行です。旧町立図書館を利用した経験や思い出、保存への願いなどを記した文章を集め、それを一冊にまとめ今後の運動に役立てようと考えています。

いったん決めたことは何があっても進めるという行政の壁は強固ですが、いろいろな手立てを尽くして運動の輪を広げ、厚い壁に風穴を開けていきましょう。

*旧図書館問題は、1月6日付け神奈川新聞及びYahoo!ニュースでも報道されました。(神奈川新聞は鎌倉市図書館で閲覧できます)