旧図書館の保存・活用まで、あと一歩、もうひと押し

2015年7月1日 旧鎌倉図書館

1.「現況調査・中間報告」を市に提出

前号の会報でお知らせしたように、5月16,17日に、旧図書館の専門家による調査が無償で行われました。そして早くも10日後には、調査の中心を担った建築家・菅孝能さんの尽力により中間報告書が作成され、それを市に提出しました。

5月27日に提出した「旧鎌倉町立図書館現況調査・中間報告」の概要は以下のとおりです。
・建物は構造的に頑強に造られ、耐震性は十分に高く、大変健全に維持されている。
・一方、市による不十分な保守管理から一部に腐朽が見られる。
・図書館以降の使用目的の変更に沿った度々の改変・増築が建物の価値を損ねている。
・旧図書館の価値として、市民によるまちづくりの文化遺産としての価値、今小路通りの街並み景観上の価値、入念な架構計画・構造設計が見せる建築技術上の価値の三つがあげられる。

以上のことが豊富な写真や図面を添えて述べられています。

これらの内容を27日の市との面談でより具体的に説明し、旧図書館の保存・活用を強く求めました。

また、保存・活用する場合の経費について議論となり、菅さんより、耐震補強にそれほど経費はかからないこと、傷んだ部分を補修し、改変・増築部分を原形に戻し、仮にこどもの家として活用するとして、概算で1億円くらいではないかと述べられました。

建物の保存価値及び耐久性が専門家により立証され、経費の面でも解体してプレハブ庁舎を建てる場合と変わらないことがわかりましたが、市はこの中間報告の内容をもって庁内の調整に当たりたいという回答にとどまりました。

見学会については申し出があれば管財課で対応したいという回答で、市自らが実施する考えはないことを示しました。

2.5団体連名の要望書再提出

6月に入り、いざかまくらトラストの佐藤江里子副代表より、2月13日に市に提出した要望書と同じかたちで5団体(いざかまくらトラスト、鎌倉の世界遺産と秘宝を訪ねる会、山手総合計画研究所、鎌倉の世界遺産登録を目指す市民の会、TOTOMO)連名の要望書を再提出し、同じ内容で議会にも陳情したい旨の提案がありました。TOTOMOもそれに賛同し、6月9日に要望書と陳情書は市及び議会に提出されました。

内容は、5月の現況調査で旧図書館の建築技術が高く評価されたこと、国の登録文化財に値する建築物であること、御用邸文化を今に伝え歴史的風致として護られるべき場所であること、こどもの家として活用し次世代への情操・文化教育のためのよき環境となることなどが新たな論点として強調されています

旧鎌倉町立図書館を保存・活用することを求める要望書 (PDF)

6月23日に松尾市長と20分ほど面談する機会を得ることができました。TOTOMOからは黒瀬さんが出席しました。

要望書への市長の回答は、文化財的価値を持つ建物であるなら保存していきたいが、こどもの家として使用するという前提があるので、安全面の確保や費用面の検討をしなくてはならない、それが明確になっていない現段階では保存するという約束まではできないというものでした。

3.議会への陳情

9日に提出した陳情書は10日、総務常任委員会に付託されることになり、6月25日の同委員会で審議されました。

提出者代表の内海恒雄さんが陳情書の内容に沿って10分間の陳述を行い、原局の陳情に対する回答の後、審議に入りました。

議員からの主な意見は「予算は一度議決すると議会が変更することはできない。あとは市長が判断し決めるしかない」「解体か保存か、大きなテーブルを設けて議論すべき。

それを判断材料に市長が最終決定をすべきだ」「文化財としての価値判断はしていないのか。市民が大切な文化遺産だと言っているのは重く受け止めるべきだ」というものでした。
理事者質疑で市長は「7月中に現況調査の本報告が出る、市民も募金活動をしていると聞いている。

それをもとに判断したい」と答弁し、これに対して委員から「調査も金集めも市民にやらせて、それから考えるというのは本末転倒だ。7月中に決断すべき」と追及されましたが、「本報告が出てから判断したい」と回答し、市長は期限については明言しませんでした。

議案の採決に入り、「議決不要」が2名、「継続」が4名で、2月のTOTOMOの陳情に続き、今回も「継続」となりました。

議員が言うように、解体予算執行の可否は議会の手を離れ、一に市長の政治的判断にかかっていると言えます。

そして、上に述べてきたように、旧図書館の保存価値、建築物としての耐久性、解体・建替えと保存・活用のコスト比較など、判断材料のどれをとっても答えは明らかです。

御成小の旧講堂を保存すると決定したのなら、正門をはさんで対をなす旧図書館も保存するという勇気ある決断を要望します。