旧図書館保存・活用のための活動は、まだまだ続く… 署名簿提出・募金活動・TV取材・専門家調査

2015年5月20日 旧鎌倉図書館

図書館とともだち会報171号掲載

専門家団体からの要望書

前号以降の旧図書館をめぐる動きを報告します。
日本建築家協会に引き続き、横浜歴史資産調査会と日本図書館文化史研究会より旧鎌倉図書館の保存を強く求める要望書が出されました。

旧町立図書館の保存について(横浜歴史資産調査会) PDF
旧鎌倉図書館の保存について(日本図書館文化史研究会) PDF

横浜歴史資産調査会の要望書には、吉田鋼市横浜国立大学名誉教授の所見が付され、「旧鎌倉図書館は戦前に建てられた図書館の神奈川県内における唯一の現存遺構」であり、「近代鎌倉の文化レベルの高さと鎌倉市民の文化意識の高さを物語るよき証左となっている」と評価しています。また、「御成小学校講堂や御成門と一体となって、…良好な景観を形成する重要な要素になっており、神奈川の図書館の歴史、ひいては広く文化史上からも重要な文化遺産」と述べています。

日本図書館文化史研究会も神戸女学院大学図書館や大阪府立中之島図書館の例を挙げながら「今回の計画は、近年全国的に広がっている図書館等の文化的意義を有する建造物保存の動きに逆行する」ものであると指摘しています。
 

署名簿提出と経営企画部長との面談

3月30日に市長と面会し、旧鎌倉図書館の保存・活用をもとめる署名5,384名分を直接手渡しました。15分ほど市長と面談し、現時点での市の考え方を伺いましたが、市民への説明会の実施など今後の対応については検討中で具体的なことは決まっていないという答えでした。

さらに、4月22日に追加の署名726名分を秘書課に提出しました。あわせて6,110名の署名数となりました。署名に協力していただいた鎌倉市民をはじめ全国の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。

2月議会への陳情は専門家の意見を待って慎重に進めるべきという「継続」扱いとなったことは前号で報告した通りです。そして上に述べたように専門家団体からの保存を求める要望書が出されました。

こうした動きを受けて、4月9日に経営企画部長と面談の機会を持つことができました。部長より、話し合いによってよい解決策が見出せれば庁内調整に当たりたいという話があり、協議の結果、保存するにせよ解体するにせよ、そのためには専門家による旧図書館の調査が不可欠の手続きであろうということになりました。

市費による調査は予算化されていないため実施できないことから、同席した当会の会員でもある建築家の菅孝能さんから無償での調査が提案されました。TOTOMOから4月16日に調査に関する要望書を提出し、5月16,17日に調査を実施することになりました。
歴史的建造物「旧鎌倉町立図書館」調査に関する要望書

募金活動を本格始動

旧図書館の保存・活用を望むならば、市民もそのための費用を集める努力は必要であり、多くの資金を集めることができれば保存・活用への後押しになるという考えから、機会あるごとに募金を呼びかけてきました。

その呼びかけに共鳴して、日本古民家保存研究会代表の瀧下嘉弘さんから、4月11日に自邸で開催するピアノコンサートを旧図書館の保存・活用のためのチャリティコンサートとして実施し、収益金を募金したいという申し出がありました。

会としてありがたくお受けし、当日は会場にポスターを貼ったり署名用紙、会報、文集『旧鎌倉図書館と私 その3』、『鎌倉図書館100年のあゆみ』などを置かせてもらいました。またコンサートの冒頭に旧図書館問題について説明する時間をいただきました。その結果、日本古民家保存研究会より多額の募金をいただくことになりました。

集まった募金をプールする専用の口座を設ける必要がでてきたので、口座名を「旧鎌倉図書館保存ととも基金」とする口座開設の手続きを現在進めているところです。

TBSによる取材・放送

4月18日、TBSテレビから旧図書館問題について取材の申し込みがありました。4月20日にTOTOMOのメンバーと「噂の東京マガジン」のなかの「噂の現場」コーナーを担当するディレクターと打ち合わせを行いました。事前に下見したい場所(旧図書館、市役所、御成小旧講堂・正門、英勝寺山門など)、確認したい項目(取り壊しの理由、旧図書館が建てられた経緯、建造物としての歴史的・文化的価値、今小路西遺跡との関連性など)が文書で送られてきて、かなり正確に予備知識を得ている印象でした。

行政対市民という構図を面白おかしく煽り立てる番組になっては私たちの運動にマイナスになるので、そうした懸念を率直にぶつけました。これに対して、「行政の言い分や公平中立な専門家の意見、街頭での市民インタビュー等多角的に紹介しながら、お互いに歩み寄るにはどうすればいいか、解決する妙案を探るのが番組のテーマです」という返答だったので、その言葉を信頼して取材を受けることにしました。

番組は5月10日に放送されました。当初は12,3分ほどの放映時間とのことでしたが、20分の長尺となり、内容も押さえるべきポイントは押さえ、多角的にわかりやすく構成されていました。市側のコメントは文書によるものでしたが、旧図書館の取り壊しについて「未定」と対外的に明らかにしたことは大きなことだと思います。

専門家による旧図書館の調査

5月16日、17日の二日間にわたって旧図書館の調査が行われました。調査主体は横浜歴史資産調査会「旧鎌倉町図書館」調査委員会(委員長・吉田鋼市氏)、調査メンバーは神奈川県建築士会スクランブル調査隊の方々を中心に編成され、延べ30名の人員で詳細な調査が行われました。ほかに管財課職員延べ4名が立ち会い、メディア関係3名、青山学院関係2名が見学しました。TOTOMOからも延べ8名が接待にあたりました。

調査の過程で、外壁、屋根瓦などに傷みはあるものの、床下もよく乾燥し腐蝕などはなく、窓の開閉もスムーズで建物の歪みがないことが確認され、構造や強度的に十分保存に耐えられる建造物であることがわかりました。この調査が保存・活用への力強い第一歩になればと願うばかりです。

調査報告書がまとまるのは数か月先になる見通しです。それがまとまった時点で発表の場を考えたいと思います。